裏モノ探険隊:一風堂へ戻る




「ソープ嬢と店外デートと危険ドラッグ(後編)」 -危険ドラッグ編






地元に戻るとコンビニの隣に薄明かりと派手な看板のちぐはぐなお店が目にとまった。

『アダルトグッズ』

看板にはそう書いてある。
『風俗嬢は俺にロクな事を教えない。』

これはここまでの人生で痛感している事だ。
何と言うのかな?やっぱ彼女らとぼくらとでは住む世界や見えている景色がほんのちょっとだけズレがあるのだ。
それを踏まえてお店に入る。

なんと!

階段を上がった先にお店はあるのだがその階段の下にカズミの言っていた例のモノが自販機で売っていたのだ。
それは5種類くらいあってコンドームの自販機みたいなボックスに並んでいた。
色んな種類があるがどうせ中身は似たり寄ったりだろう。
一番右に『お試し1本』みたいなものが500円で売っていたのでそのボタンを押してみた。ゴトンゴトンゴトン。


その箱は車に入れたままで数日間忘れてしまっていた。


後日、箱を開けてみると粗末な紙に巻いたタバコのようなモノが入っていた。

『なんじゃこりゃ』
第一印象はこんなモンだった。
中を開けてみると雑草を枯らしたようなモノが入っている。効くかよ、こんなモン。
数年前にやってみたアダルトグッズの方がまだマシに思えた。

とりあえずパイプに詰めて火を着けて吸い込んでみる。フー。
もう1回吸い込んでみる。フー。
さらに詰めて吸い込んでもう1回。フー。(この時あり得ないぐらいの煙が口から出てきた)



ガクン。



突然目の前の視界がグルグル回り始めた。


ヤッベ。これホンモノじゃねーか。


たぶんだけどタバコも吸わないぼくにはこの時吸い込んだ量が少々厄介なほど多かったんだと思う。
座ってられなくなったぼくは部屋で横になった。
ヤバイ、グルグル回る。目を閉じると状況はさらに悪化する。
効くのはせいぜい2、3分だと自分に言い聞かせてやり過ごそうと思うが何やら時間軸が狂っていて1分が果てしなく長く感じる。
コメカミがズキズキと痛む。いや違うこれはぼく自身が歯を食いしばりすぎて痛むのだ。
舐めすぎていたためロクなセッティングもしてなかった事もあり相当なパニックを起こしたぼくはアスピリンを飲み込んだ。
しかしそれでも一向に効かない事にさらにパニックを起こし、さらにアスピリンを飲みこんだ。
それを4度繰り返し、胃薬も3回ほど飲んだ。

たぶん1分もかからない間にだ。

異常に喉が渇いてそこらにある飲み物を一気に飲み干したい衝動に駆られる。
酒は一滴も飲めないが目の前にある友人の置いて行ったウイスキーの瓶を口を付けて一気に飲み干したい衝動を抑える。

それは死ぬ。確実に死ぬ。

水道水をガバガバと飲む。
水を飲んで薄めて、もしくは吐き出してしまえば戻ると思えた。
肺から吸い込んでるのだから胃から吐いても仕方がない事ぐらいは今なら分かるのだが冷静な判断が出来ない。
必死に吐こうと思うが凄いスピードで水分を吸収するのか吐けない。
水を飲む。とにかく飲む。
経験上、というほどでもないが水分を沢山取って小便をするのが一番身体から毒を出せる。


しかし事態は一向に好転しなかった。

静かに横になる。このままでは無駄な体力を消耗してしまう。

だが悪い事にそこから『死ぬ』という事がぼくを支配してしまった。(さっきのウイスキー飲んだら死ぬというイメージから)
手足は異常なまでに冷たくなり全身を寒気が襲った。いよいよヤバイ。

『今日、俺は死ぬのだ』

そう思った、というかそう信じ込んでいた。

『こんな風に死ぬとはね』

冷静に受け入れようとする自分が恐ろしい。

『死ぬのを待つくらいなら自ら決着をつけた方が良いのではないのか?』

と、頭をよぎる。これが自殺念慮というやつか。

もしかしたらこんな風に考えて飛び降りてしまう人がいるのかもしれない。
あのソープ嬢はこの状態でオナニーするってアタマおかしいんじゃないか?
でも何かに没頭して時間をやり過ごすのも1つの手かもしれない。とにかく舐めてた、のひと言に尽きる。

遠くで救急車の音が聞こえる。誰だ、救急車を呼んだヤツは。もしかしたら俺かもしれんな。
合ドラだし本当に救急車を呼べば良いように思えたが生きて恥を晒すよりは死んだ方がマシだろう。。



。。。。。。。。。。。。。
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1時間ほど経った頃だろうか。(もしかしたらもっと短い時間かも)
やや、肉体と精神のコントロールが出来るようになってきている気がしていた。
すさまじい尿意を感じたがトイレのある場所まで行ける気がしない。
迷わずそばにあったペットボトルに放尿した。ありえない勢いで放尿は続いた。
小便ができた事でより落ち着いたのでまた横になる。暗いな。この部屋の明かりはこんなに暗かったっけ?

天井の角を見てから違う場所に視線をズラす。
天井の角を見てから違う場所に視線をズラす。
それを繰り返すとピントがやや合うようになってきた。

『薄まってきているな、、』

そんな実感がして安心できた。
試しにテレビをつけてみる。
大御所女性お笑い芸人が司会する番組がやっていてその女性芸人の発するひと言ひと言が鼻についた。
オナニーもしてみたけど全然良くはなかった。作用は3時間ぐらい続いたように思う。


残念ながら良い事は何も無かった。


最近これの中毒者とかよく記事を見たりするけどそれこそアタマおかしくないか?
まぁぼくのまがい物(?)と違って良い事もあるモノなのかもしれんけどね。



。。。。。。。。。。。。



ソープ嬢よ、確かに効いたよ。悪かったよ、小バカにしちゃって。
でもアカンで。これはアカンで。

そして今や違法になったこんなクソみたいなモンで捕まって人生狂わすのはもっとアカンで。

ぼくは数時間後に、残っていた合ドラを憎しみと共に焼却炉に投げ込んだ。
こいつはハーブか何かに解析できない何らかの薬品が染み込ませてあるに違いない。
それが何なのか分からないのが恐ろしいところだと思います。






その後、そのソープ嬢のカズミとの関係はお店に行ったりもしたし野暮用でぼくの仕事先まで来てくれたりもしましたが、
ある日、やはりこれ以上彼女に深入りしてはいかんと思いまして、お店に行くのも連絡を取るのもやめました。
※本心を言うと本気で好きになっていまいそうだったから。
カズミには『店なんか来なくても私が休みの日に会えばいいじゃん』と言われていました。
※深入りして自分が傷つく前に逃げたというのが正解。



久しぶりにきたメールでは、前に話した『夢を叶える為に借金して起業するからお店をやめる』というような事が
書いてありましたが十数年経った今現在、どうしているかは定かではありません。すこし危うそうな夢でしたがどうかな。
でも彼女の事だからおそらく、現実との折り合いを付けながらも図太く生き残ってくれているはずだ、と思うのです。









色々とボカしながら書きましたし語りきれなかった事があまりにも多かったですが、
最後まで読んでくれてありがとうございました。

      
もし、不快に感じた方がおられましたら大変に恐縮です。                     


 (了)




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