ニュー裏モノ探検隊:一風堂

日本フーゾク。たいちょうのひとりごと

宗教団体に1日入門

HP過去記事です。時代背景は1991年ごろです。

 

 

※この話にはエロは何ひとつでてきません。エロを期待している方はスルーしてください。



完全無欠のぷータロー時代のこと。
朝イチでパチスロのモーニングを拾いに行く。それが単発で終わってしまうとその日は1日中何もすることがない。もちろん金もなくバイトもない、というかしたくもない。早い話が人間のクズだった。(誰がクズじゃ)

しょうがないので市バスにでも乗ろうと待っているがバスは20分後にしか来ない。ぼくはベンチでぼーっとしていた。すると目の前に中の下くらいのメガネ女がたたずんだ。


嫌な予感がした。


「祈らせてください」


ありゃりゃ。やっぱりだ(´・ω・`)

ここは某宗教団体の布教地域なのだ。
女はスマイル全開だ。でも目が死んでいる。思いつめたような目が真っ直ぐに向いている。付き合いたくないタイプだ。セックスをしても「どうしてこんな事するの?」とか言いそうだった。※お巡りさんこのひと童貞です!


いつもなら完全無視だが、死ぬほど暇だし相手が女なので話を聞いてみた。

(お祈りは拒絶)
話の流れで女はぼくに宗教の支部への見学を強く勧めた。
「見学だけですから。無理に入会なんてさせませんから」
この言葉を信じて破滅の人生を辿った奴は少なくない。(まぁ本人はそうは思わないかもね)
だが地下鉄に乗り私は女に付いていった。
この頃のぼくは少々自暴自棄になっていたし、流れに任せるフワフワとした人生に美学を感じていた。それに私はそのとき身分がわかるものは何ひとつ持ち合わせていなかった。金もパチスロでスって小銭が少々あるだけだ。失うモノは何もないので何となく気が大きかったのである。

着いた先はちょっと大きな民家風の建物だった。
白装束の30歳くらいの男が出迎え、案内人のメガネ女は去って行った。たぶん次の獲物を探しに行ったのだろう。こうなって初めてぼくは激しく後悔した。来るんじゃなかった。だって、あのメガネ女が案内すると思ってたのにこの男どう見てもシャレが通じる相手ではなさそうだもの。


応接室(純和風〇〇チック)で男が簡単な挨拶をしてこの宗教がいかに素晴らしいかを軽く語った後。


「見学料は2000円です」
と、男はのたまった。
「ありません」
即答だった。だって本当に無いのだ。
男はしばらく考え込んだあと、「では代わりに奉仕活動をしてもらいます」と言った。

{オイ!何でぼくがお前のところの奉仕をせねばならんのだ!}と、言える状況でもなく私はこの家の玄関の掃除をする事になった。簡単なはき掃除である。
そばで男が見守って(?)いたが、逃げないように見張っていただけかも知れない。
確かにチャンスさえあれば逃げ出すつもりだったが、男はその隙を与えなかった。
ぼくは仕方なくはき掃除を終えた。何だか一生帰れないような気もしてきたがな。

掃除が終わると白装束のようなものを羽織らされ道場のような板の間と畳のあるだだっ広い30畳程度の修行場に通された。
奥には信者の名前が書いたものがズラリと張ってある。立派な板に書かれた物から、ただの白い紙に墨で書いただけの粗末なものまであった。
男が語るには、地位の高い順に並んでおり、一定の地位までは信仰度によって上がれるらしい。そこから先は修行によって幹部になれるのだ、という。

はっきりとは言わなかったがその{信仰度}とやらが現金の事を指している事ぐらいぼくのようなぷー太郎にも理解できた。男は付け加えた。「ご家族のご協力も神は喜ばれます」うん。どうやら現金だけでなく株券でも不動産でも何でもござれの姿勢のようだ。ここの神様はよほどお金や財産が好きらしい。俗な神である。しかし神さん何に使うのかしらね?


見学はこれにて終了。

 

あと男に残された使命はぼくを宗教に入会させる事になる。

きっと神様に頼まれたのだろう。
とてもしつこい勧誘だ。というより強制に近い。必死である。

そしてぼくに残された使命は入会せず逃げる事だ。(神様、僕を見逃してください。)
男は1枚の紙を取り出した。そこには「○(内緒)」という文字が墨で書かれている。なかなか達筆だ。


「5万円のお布施でこれを差し上げます。この紙にはあなたの想像もつかないほどのパワーが込められています。これをあなたは肌身離さず身につける事で気が上昇し、あなただけでなくあなたの周りの人、それが他人であっても気を分け与える資格を得る事ができます。それはあなたの掌から放出します。あなたにはその使命があります。そしてこの素晴らしい価値観を広める義務があります。」


男はこんなような事を言ってのけた。その顔は自信に満ち溢れ、威圧感すら漂った。今思うとまるでアメリカのチンコ増大サプリメントメーカーの日本語訳のようだ。

なるほど。どうやらここの神様はたったの5万円で下々に超能力を分け与えてくださるらしい。なんとも安い神である。(紙なだけにね、という安いシャレが脳裏をかすめつつ当時のぼくにとっての5万円は遥か彼方にある大金でもあった)


いやはや修行もへったくれも要らないのである。ずいぶんと敷居が低い異能やのう。それとも懐が広いのかね?


入信後は毎月最低1万円~青天井のお布施と、街頭による布教活動が必須となる。勉学や仕事は続けて良いが、暇な時間は教団のために尽力せねばならない。寝る間を惜しんで、でも、である。

ぼくは丁重にお断りした。
が、そんな事で引き下がるような相手ではない。男は言う。
「なぜあなたが受け入れないのか私には理解できない」
「ぼくはお金もないし、興味が持てない」と、はっきり答えた。
「あなたは幸せになりたくないのですか?地獄の荒行に耐えられるのですか?」
どうやらぼくはこのままだと地獄行きらしい。
「私に全てを委ねなさい」男は諭すように言った。。。

ここでぼくが涙を流して怪しげな文書にサインするほどピュア(?)なはずもなく押し問答が続く。


「心を開きましょう」
「いりません」
「自分と家族の幸せを考えないのですか?」
「いりません」
「そもそも人間という生物は。。。ビル$なぞ&%ドグマ#!?ガイア?高等民族%$パラサイトZZ」
男は訳の分からん精神論を展開しつつ、入会を迫った。

辛い時間だ。1時間以上も同じ質問と回答が繰り返されたように思う。
ぼくは取りあえずサインしようかと考えた。これ以上は耐えられそうにない。偽名を使えばいい。(なんか警察の取り調べでもこういう感じで自白強要へ持っていくんじゃなかろうか。まぁ一緒にしてはいけない事を承知で)


しかし色々な状況を考えてもそれは良くない選択に思えた。嫌な予感がする。ぼくは妥協案を出した。1日だけ考えさせてくれ、と。
すると男はぼくに住所と名前と電話番号を書くように迫った。

男は言う。「神様は見ています」
{嘘をつくなよ}と言う脅しだろう。
{神様はアンタのあくどい勧誘も見てるんだよ}と言ってやりたかった。
{まぁ地獄でいずれ会おうず。。。}

と、言う訳で偽名を記入して立ち去った。
偽名と住所は友人の名前を記入した。
(だって覚えていたのそれしかなくて、ごめん。そこででたらめを書く余裕がなかったのです)


ただし、電話番号はでたらめを書いた。

「変な宗教から何回も電話があって鬱陶しくてさ」後日の友人の言葉である。
神様は電話番号を住所から調べたようだ。ぼくは友人に何も言えなかった。

(重ね重ねスマン。心の友よ)

でもぼくには電話はかかってこないので神様の力でもぼくの電話番号は調べられなかったようだ。あかんやん。能力が足りんぞ能力が!

ところで、神様を欺いたぼくは地獄に落ちるんでしょうかね?ん?でなくても地獄に行きは決定?テメー!って…ぼくもそう思うけど…。

PS.この後オウムの事件が明るみに出ました。インチキ宗教は恐ろしいです。ぼくは無事に帰ってこれて良かったと思います。冷やかし禁止です。奴らマジですからね。少しのボタンの掛け違えがあれば友人や親や親族まで巻き込んだと思うとおそろしいです。(お前友人の名前売っとるやんけw)


あと、まだバチはあたっていません。

(たぶんですが、バカだから気づいてないのかもしらん)

ぼくは今日も神に祈ります。「世界が平和になりますように」 

 

(完)

 

 

2023年追記:

まぁまぁ。これけっこうぼくの人格形成に影響しましたね。大人がよく『知らない人に付いて行っちゃっダメだよ』というのが本当だと分かりました。そこから疑い深くなってしまった面も否めないです。あ、ぼくは神社仏閣が大好きなんですよ。神様も居ると思いますよ、でないと世界中で神様が信仰されてはいないでしょう。ただ神さんは何もしてはくれない。見守っているだけです。

 

神は居ます。そうアナタの心の中に。(お前も怪しい宗教くさいぞ)

 

 

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